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京のお話

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市田ひろみさんの

京都論


第19回 日本は京都に学べば大丈夫

「なんや、かわったことしてるなあ」と、新しいことが始まると最初は遠巻きに見ているのが京都人。変化にパッと反応する都市とはちがって、腰をなかなかあげません。でも、伝統と格式の国イギリスからパンクファッションが生まれたように、むしろ一番過激な発想は、歴史や伝統が重たいところから出てくるものです。

京都には老舗が幅をきかせているいっぽうで、最先端テクノロジー企業もたくさんあります。こうした企業は、それぞれ京都の伝統からヒントを得ています。ワコールは京都のもっとも得意とする繊維産業ですし、京セラ、村田製作所の原点は清水焼です。ファミコンで世界一の任天堂は、もとは伝統遊具のカルタ屋さんでした。オートメーションのオムロンだって、発想の元は京風の「もてなし」だと常務さんがおっしゃっています。京都の産業を足がかりに、時代に敏感に反応しながら変身をとげてきたのです。  

京都は盆地なので、重厚長大型の産業は育ちにくい。しかし、発想の面では負けていません。湯川秀樹さん、江崎玲於奈さん、福井謙一さん、利根川進さん、東京教育大学(現筑波大学)の朝永振一郎さんも、もとをただせば京都大学の人、アカデミズムの世界では京都大学がノーベル賞を独占しているのです。研究開発にかけては世界屈指の力を持っているといってもよいでしょう。その技術力を独自のアイデアで産業に生かして、新製品の開発が手がけられてきたわけです。

面白いことに、京都の誇る先進企業の経営者には、京都人でない方が多数ふくまれています。最初は摩擦も多かったと思います。しかし、地元にしっかり根付き継続させるために学問研究の援助や寄付を惜しみなくして、地元の信用を得る努力をしてきたのです。そうした努力の一方で、京都の伝統を上手に引きだしました。京都という町は、その力を上手に引きだす人を得れば、高度で上質な製品を生み出す豊かな土壌の土地なのです。もしかしたら、外から冷静に観察した人によって京都は大きく発展するかもしれません。京都は計り知れない潜在能力を秘めているのですから。

そう考えると、京都は、まさに日本の縮図だといえます。京都が盆地だというかぎられた土地であるように、日本も世界地図の中では小さな島国。京都は長い伝統とすぐれた文化を維持しているとはいえ、政治力もなければ軍事力もない。国際的な政治力・軍事力をもたない日本そのものではありませんか。  

京都が生きのびる道も日本が生きのびる道も同じです。長い歴史に裏づけられた伝統や文化と、ノーベル賞学者をつぎつぎと輩出するアカデミズム、そして自分たちの力で支えるという自立の精神、その場かぎりの損得ではなく、信用と実績を重んじる着実な経済感覚、そうしたものが京都の底力ならば、これこそ日本の国の底力であるはずです。

外人さんが京都にきて京都のすばらしさを発見するように、日本という国をもう一度外から観察すると、気がつかないでいた大きな力を見つけだせるはずです。

市田ひろみ著「京の底力」 ネスコ文芸春秋より

まとめ:e京都ねっと 小山



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