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京のお話

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市田ひろみさんの

京都論


第14回 いい日本人でありたい

 「日本人っていいね。日本の文化は素晴らしいね」と外国の人からいってもらえるようでありたいと願っています。 ところが、残念なことに「旅の恥はかき捨て」を地でいくような日本人の悪評は、いっこうに収まりません。

 アウシュビッツ。ナチスの強制収容所のガス室の前で、ピースのサインをして、記念撮影に興じる日本人の若い娘さんのふたり組がいたそうです。 (あの有名なガス室に来たのよ)という軽い気持ちだったかもしれません。 世界中の人が知っている第二次世界大戦の悲劇を、彼女たちはどう受け止めていたのでしょうか。  

 また宗教に関係する建物の中、観光名所として知られている場所であっても、本来は祈りの場。むやみにはしゃぐのは厳禁ですし、写真を撮るときには、許されているかどうかを確かめるくらいの配慮はしてほしいものです。 エジプトのサッカーラには古い階段式のピラミッドがあります。現地の人が、「日本人の団体が来たときは、すぐにわかるよ」なぜかというと、バスが去ったあと、ピラミッドの周りにはポッキーや酢コンブの空箱がいっぱい落ちているからだそうです。 サッカーラの村は本当に貧しい村で、捨てるものがなにもないような砂漠の村ですから、ふだんはきれいですが、日本人観光客が行くと、急にごみがふえるとのこと。

 最もショックを受けたのは、ブータンで聞いた話でした。ブータンはまだ貧しい状況が続いており、観光客に見せるところといったら、ラマ教のお寺くらいしかありませんでした。 そして、彼らが誇りにしているラマ教のお寺へ案内されたのです。 祭壇にはキラという四角の布でできた民族衣裳がお供えしてありました。 ブータンでは人が亡くなると、その人の着ていたものを三日間、仏様にお預けする習慣があるそうです。 そして、三日経ったら、遺族がそれをとりにくるというのです。

 「先月、日本人旅行者が仏様にお供えしてあった亡き人の服を盗んでいったのです。」それを聞いた私は、思わず「信じられない!」と声を荒げてしまいました。 民族衣裳といっても、市場で買えば、6000円くらいで手に入る代物。 日本人が、買えずに盗んだとは考えられません。 彼らにとっては、旅先での遊びだったのでしょう。 しかし、貧しい人にとっては、故人をしのぶたったひとつのよすがとなるものだったのかもしれないのです。 (同じ日本人としてなんという情けないことをしてくれたのか……)と憤りを感じずにはいられませんでした。  

 私は世界できもののショーを通じて多くの外国人が日本の文化に敬意を払い、日本人に友情を感じてくれるのを、肌で感じてきました。 また、世界各地で国際協力に貢献する日本人が、現地の人の尊敬を集めながら働いている様子も聞いています。 しかし、その一方で故人の衣装を盗むような不届きな日本人がいたら、せっかくの国際貢献は帳消しになってしまいます。

 「あなたは何人か?」と問われたら、やはり私たちは日本人と答えるしかありません。 日本という国に愛着がなくても、日本国籍を持っている者は、日本以外の国では生きる権利を約束されていないのです。 国際化社会の舞台で求められるのは、根なし草のような人間ではなく、自分の背負っている「日本」を自覚することのできる人間だと思うのですが。

市田ひろみ著「ええ女の作法四十四の極意」より

旅先、集団行動となるとつい気が大きくなってしまう事があります。 八坂さんで桜を愛で、宇治川花火をしっとりと浴衣姿で見た後に残された、惨い程のごみの山を目の当たりにした人はたくさんいることでしょう。 暴力的に思える程の土壁への落書き、狭い骨董品屋で危なっかしく振り回される旅人のリュック、敷かれた毛氈の上を歩かずに駆け回る子供を放りっ放しでガイドの説明に聞き入る親達(そのガイドさんは途中で説明を打ち切りました)。 京都の愛し方がずれている人が余りにもたくさんいます。 ・・・あなたにもそんな覚えはありませんか?

まとめ:e京都ねっと 小山



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