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京のお話

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市田ひろみさんの

京都論


第18回 十二単は日本の誇り 〜変わらないことの価値〜

アメリカ人はほめ方がうまい。少しでもいいところがあれば「グッド」、もうちょっといいと「ワンダフル」。相手をほめる言葉がたくさんあるということは人間関係を円滑にする上ですばらしいことです。

 こんな賢いリップサービスは京都と似ています。そんな彼らから最大級の賛辞エクスクイジット!(このうえなくすばらしい)」をいただいたことがあります。アメリカでショーを開いたときにお見せした、京都の歴史とロイヤルコスチューム、つまり束帯お十二単にたいしてです。  

 そのとき、京都という町は1200年を経ている、天皇が儀式に用いる束帯や十二単は、1000年もスタイルが変わらずに守られているということをお話ししたのです。合理的に変えることをモットーとしてきたアメリカの方には長い時間、変わらないことは驚嘆にあたいするのでしょう。

 実用性、効率性ということからいえば、きもの以上に十二単は非実用的で非効率的です。動けない、重い、苦しい。しかし、普段着としての便利さを十二単に求めることはありません。価値基準がまったく異なっているからです。ひとえに、格調高く威儀を正し、壮麗であるように調えられているのです。

1000年間もの長い間、形態が変化しない衣装は、世界でもたぐい稀なもので、イギリスのエリザベス女王は1000年前と同じデザインの衣装は着ていないし、フランスは革命で王室そのものがなくなってしまいました。  

 形を変えようと思ったら、一日でできてしまい、守ることのほうが何倍も難しい。変わらずに残っているのは、変わらないように努力し、守ってきたからです。京都の古いものも、ただ停滞の中で残ったわけではなく、誰かが守ってきたから現在もあるのです。

 かりに、それが権威主義的な要素を持つとしても、長い期間守られてきたスタイルは、ひとつの様式美として日本人の美意識に組みこまれ、定着してきたのです。束帯、十二単という装束を着た人が威儀を正しているだけでなく、見ている者にも威儀を正させる強い力を持っているのです。それは様式美と価値体系をそのまま体現しているからだと思います。歴史に支えられたセレモニーへのこだわりが、日本人の心の奥にあるからではないでしょうか。

 京都人の誇りも同じです。それを維持する努力をしてきたから、日本は文化国家なのです。 

 最近では外国でも日本のテレビ番組が放映されるので、先進国の人は、艶やかな衣装や、笙、篳篥の典雅な音にしびれ、「すばらしい、日本にはこんな壮麗な儀式が伝えられていたのか」、欧米ジャーナリストは「心を打たれた」と感銘するのです。

美意識や価値観が異なっていても、すばらしいものであれば、必ず評価されるのです。そして、その異なった部分こそが、日本独特のすぐれた価値なのではないでしょうか。

市田ひろみ著「京の底力」 ネスコ文芸春秋より

まとめ:e京都ねっと 小山



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