|
お金のことをあからさまに口にするのは、はしたない。
日本人には「心づけ」というすばらしい習慣があります。これは義務ではなく、感謝の気持ち、ねぎらいの心といった思いやりを表わすお金なのです。ですから、お金そのものの額よりも、気持ちが大切です。気持ちですから金額に規定などないものです。
そして、恩に着せるような渡し方はすべきではありません。京都の人は心づけの渡し方が本当に上手です。日常でも心づけの習慣がありますから、慣れているのでしょう。
ちょっとした用を足してくれた人にでも、お料理屋の仲居さんにでも、いろいろな場面で渡しています。これが人間関係をスムーズにする潤滑油となっているのです。
旅館に泊まったときなど、渡さなくては落ち着かないし、渡しそこなったらもっと恰好悪い。ごはんを食べ終わったあと、仲居さんがお膳をさげにくるときにおひつの横にちょっとはさんでおくといいでしょう。 こんな渡し方は京都の人ならお手のものです。
市田ひろみ著「京の底力」 ネスコ文芸春秋より
市田ひろみさんはいつもポチ袋(祝儀袋)を持ち歩いているそうです。凝ったデザインのものにあらかじめ直筆で「御礼 市田」、「ありがとう 市田」と書いてありました。「ありがとう」と書いておけば、もらう側も「御礼」と書いてあるものよりも、なんとなくほっとして受け取りやすいかもしれませんね。
何かとても骨を折る事をしてもらったり、あるいは忙しい人に手間のかかる用事をしてもらったりした時に、後で気付いてもらえるようにそっと置いておきましょう。 もし、「お金を渡す」のは気がひける、という方は、ご自分が以前食べて美味しいと感じたお菓子や、その人がなさっているお仕事に合うような、ちょっとしたものを渡すのも良い方法かもしれません。
「もう、そんなんけっこうどす」
「いやもう、どうぞ」
「いやいや…」
それでもこんな風になってしまって、受け取ってもらえなかったら、後で早い内に電話や葉書などでお礼の連絡をしてはいかが。 わずらわしいと思う人もいるかもしれませんが要するに、相手の心の負担にならないよう気をつければいのです。心がこもってこその心づけ」。
しかしお金の扱いかたというのは本当に難しいです。きたないけれども、でもやっぱりいちばん必要なものなのです。相手のしてくれた事に感謝して、きちんとお礼の気持ちを伝え合う。日本の良き習慣だと思います。
|