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京のお話

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雑記
雑記編 【どうぞぶぶ漬けでも・・・】

京都ではお茶漬けの事をぶぶ漬けといいます。 京都独特の言い回しの中で最も有名なものと言え、皆さんの中にも耳にした事のある人はおられると思います。 これは「そろそろお時間ですよ」という合図でもあるのです。

 よその家で「ぶぶ漬けでもいかがどす?」と引き止められたとします。 その時あなたはどうしますか? その家に居続けますか? それとも遠慮しますか? そこはあなたが状況判断をするのです。

 どうしようかな、急にふらっと立ち寄ったから向こうの都合も分からないし・・・と迷うくらいなら「また改めて寄させてもらいます」といって、おいとまする方が良いかもしれません。 相手側も、家の中はもしかしたら取り込んだばかりの洗濯物でいっぱいで、もしも急なお客が上がりこんできたら大慌てで部屋中を片付けなくてはならないかもしれません。 間違っても「帰って下さい」とは言えないものです。

お言葉に甘えてお茶漬けをごちそうになったりしたらそこの家に迷惑になるかもしれません。 だから「ぶぶ漬けは食べない」のです。

 東京や大阪が「都市」ならば、京都は「みやこ」なのです。 京都人には昔から、自分の大切な風習や人間関係を守ろうとする姿勢を持っているのです。 何代も続いて同じ場所に住むという事も少なくありません。京都では他の人の領域にずかずかと入ることはしないし、初めてお見えになった得体の知れない人をそう簡単にほいほいと入れてしまっては、どんな事になるか分かりません。 「一見さんお断り」にも通じるものがあります。

現代人は周囲の人や友達とも適度な距離を置きたがると最近よく言われていますが、京のみやこではもう随分昔からそんなことが風習として存在していたのです。 距離を置きながら、その間にその人が家に入れて良い人か悪い人かを判断するのです。

 本当は家に上がられると厄介だと思っていても、「どうぞ上がっておくれやす、ぶぶ漬けでも」と言われたら、お客だって悪い気はしません。 絶対的には断らないのです。 ただ、この場合は言葉そのものを理解するのでは無く、言葉のニュアンスと状況を把握しなければなりません。

 「京のぶぶ漬けを食べない男には娘をやるな」ということわざもあるそうです。常識に捕らわれず、相手の意を汲んでご馳走になる事も時には必要です。古めかしくも、おいしそうな言葉の中に、時代の先を行く都市生活者の知恵が詰まっていたのです。





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