まだ「綴喜郡田辺町」でした。ということからわかるように田辺は”田舎”です。)の土地にやってきました。
京都は「”しきたり”の多いところだから大変だよ」と噂には聞いていましたが、こんなにきちんと
している所だとは、実際にこの土地に住んでみるまでわかりま せんでした。
これは後からわかったことですが、特に私の住んでいるところは京都の中でも古いしきたりが
多く残っている土地だそうです。(もっとも奈良の方になると、もっと「しきたり」が
きつくなるらしいのですが)「しきたり」は京都市内の方がきついと思っていたのに、
これは意外な事実でした。
私は、友人の中でも早くに結婚した方なので、「しきたり」の中でも一般的な部分「冠婚葬祭」についてすら、
普通はどういう風に行うのか全く何も知りませ んでした。
ですから一つ、一つの「しきたり」も姑に言われるまま。「まっ、こんなもんか」と思いながら
当時はこなしていました。やがて友人達も結婚 し、彼女達と「しきたり」について体験したことを
話し合っているうちに、余所の土地ではこんなことはしない、私の経験は珍しいことなんだ
という事が段々わ かってきたのですが・・・。
「しきたり」は時代と共に変わり、忙しい現代において、面倒なことはすべて簡素化されていっています。
ですから私のような経験をする方はこれからもど んどん少なくなっていくことでしょう。
私自身、経験したその当時は何もわからないことだらけ、初めて経験することばかりで大変だと感じるよりも、
緊張の 方が先に立つことばかりでしたが、それを乗り越えた今となっては、なかなか面白かったし、
それなりに役に立つこともたくさんありました。特に祝い事に関 する「しきたり」などは、人生の通過儀礼のおりに
経験するだけで、一生にそう何回も経験するものではありません。
それだけにやってよかった思い出深い経 験として自分の中に残っているのかもしれません。
私は何も知らず、呑気に姑の言われるままに今までやってきましたが、(「しきたり」のきつい土地に住んでいると、
よく「普段の生活もいろいろ言われて大変でしょう」と聞かれるのですが、そんなことはありません。
いたって普通に暮らしております。)
将来私が姑の立場になっていろいろと仕切るようになった時、「しきたり」をする本当の大変さがわかるのでしょう。
今回、この話を書くにあたって、姑から昔の話をいろいろ聞くことが出来ました。昔の方が今 よりもっと面倒臭くて
大変だったことは想像していた通りでしたが、それ以外に、姑自身がこの「しきたり」はいらないと判断したものは、
私にはさせなかった こともわかりました。昔のような「しきたり」を全部実行していくことは、金銭的にも
かなり難しいものがあります。私も姑がしてきたように、どういう風 に「しきたり」を次の世代に残していくべきか、
考えていかなくてはいけないのでしょう。